クリエイティブツールを創り出す
シンプル
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前回に引き続き「6穴リングレザーバインダー」のバックプレートのお話。鑞(ろう)付けする職人のご紹介です。
「6穴リングレザーバインダー」はたった3つのパーツからできています。まずは本体の一枚革。それとリフィルを挟むリング、さらにリングを一枚革に固定するバックプレート。このバックプレートの開発があっての「6穴リングレザーバインダー」と言っても過言ではありません。前回も書きましたがバックプレートは小さいながらも4つのもの職人技の集結でできあがっています。シンプルで使い勝手の良い道具は実はたくさんの手に支えられています。
取材を重ねる中で、そのひとつの手である鑞(ろう)付け職人の技術には舌を巻くほどでした。革を挟みこみながらリングを固定する幅3㎜の極小フックを一本の細いバックプレート本体に鑞付けしていく気の遠くなるような職人技がそこにはありました。
鑞に浸したフックは1個1個丁寧にバックプレート本体に仮付けされ、やっと完全に固定する工程を迎えます。そこで職人さんが取り出したのはバーナー。仮付けしたフックをピンセットで押さえつけながら強烈な炎が噴き出すバーナーの火力でフックを鑞付けしていきます。あんなに小さなパーツですから私たち素人からすればずれたり飛んでいってしまうのも無理はないと思ってしまいますが、そこは熟練した技。限りなく小さなフックを0.5㎜の狂いもなく、しかも1本も失敗せずに淡々とスピーディーに取り付けていくのでした。ちなみにこの鑞付けは非常に強力で引っ張り外そうものなら頑丈なバックプレート本体が曲がってしまうほどなのです。
作業場を訪ねたのは夏真っ盛り。エアコンを入れると付き方に影響するということで一切空調は回さず、まさに文字通り汗水垂らしながら黙々と取り付けている姿には敬意を抱き、心を奪われたものです。
PLOTTERがシンプルな道具を作り続けるきっかけや理由はいろいろなところに転がっています。デザインする私たちに勇気と創造力を与えてくれるこういった本物の職人技に出逢い、感化され、新たなモノづくりにつなげていく、こういったプロセスが開発の背景にあるからこそ使う人が心から愛着を抱き、クリエイティビティを膨らませ、未来を切り拓けるシンプルな道具ができるのだと信じてやみません。
“シンプル”であることが私たちに伝えてくれるPLOTTERのストーリーはまだ始まったばかり。これからもたくさん紡ぎ出されることでしょう。